住宅フランチャイズとは?メリットとデメリットも解説

住宅建築のノウハウを持つ企業には、大規模な住宅フランチャイズのハウスメーカーや独自に運営するハウスメーカー、工務店などがあります。
このうち、住宅フランチャイズはどのような仕組みなのでしょうか。今回は、住宅フランチャイズの仕組みや特長、加盟するメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。
住宅フランチャイズとは
フランチャイズとは、本部とよばれる運営者(フランチャイザー)と加盟店が契約を結び、加盟料(ロイヤリティ)を支払うことで商標の使用権や商品の販売権を得る仕組みです。
ここでは、住宅フランチャイズのしくみや特長、フランチャイズに加盟して成功するポイントなどについてまとめます。
住宅フランチャイズのしくみ
住宅フランチャイズとは、加盟店となる業者が本部の看板・商標を利用して、商品である住宅やサービスを利用する代わりに、使用料として加盟料(ロイヤリティ)を支払う仕組みのことです。
いいかたを変えれば、本部によってパッケージ化された住宅を販売する契約といえます。パッケージの内容は以下のとおりです。
・自社ブランドの商品(住宅のプラン)
・販売や集客のノウハウ
・設計・技術・営業のサポート
・自社が保有している販促ツール
・広告や宣伝
こういった住宅販売に関する全てをパッケージングして加盟店に提供します。
住宅フランチャイズの特長
住宅フランチャイズの特長は、本部が持つノウハウを最大限利用できることです。後ほど詳しく説明しますが、本部が持っているノウハウと同じものを独自に作り上げようとすれば、その苦労は並大抵のものではありません。
個人経営の商店が、大手コンビニチェーンと同じレベルの店舗運営や品ぞろえ、販売ノウハウを獲得するのが非常に困難であるのと同じく、一般的な工務店やハウスメーカーが、住宅フランチャイズと同じようなノウハウをもつのは困難です。
地盤がしっかりしている状態で事業を始められるため、非常に有利だといえるでしょう。
住宅フランチャイズで成功するポイント
ここまで解説してきたように、フランチャイズに加盟すると事業を有利にすすめることができます。とはいっても、どのフランチャイズでもよいというわけではありません。
加盟するにあたり、自社との相性や方向性が一致しているかなど、事前に確認するべきことが多々あります。最初に考えるべきは商品力です。
知名度が高く、誰もが知っているブランドであれば、販売上、極めて有利です。顧客が「〇〇ホーム」「△△ハウス」といった名前を知っていれば、それだけで、施工の候補に入れるかもしれません。
ブランドの認知度や将来性、話題性などがあればあるほど、加盟する意味があるといえます。販売実績数も重要です。過去の実績は今後の販売を予測するうえで大事なデータだからです。
ただし、直近の販売実績が振るわなかったり、データが古かったりする場合は注意が必要です。研修や人材育成といったバックアップの充実度も重要です。
販売に携わる社員すべてが、同じレベルで商品である住宅について熟知するには、住宅のパッケージをつくった本部の協力が欠かせません。これは、販促のサポートについても同様です。
ただ、マニュアルだけを渡し、どのようにすればよいかといった具体策を提示できないのであれば、加盟する意味がありません。本部が適切に研修を行い、顧客管理システムや顧客との商談を効率化するノウハウを提供してくれるか、事前に確認しておいた方がよいでしょう。
こうしたノウハウの提供がしっかりとなされるのであれば、極端な話、未経験だとしても加盟店として利益を上げられます。
そして、もうひとつ大事なのが経営者としての自覚を持つことです。当たり前のように思われるかもしれませんが、フランチャイズに加盟して、本部からの指示を待っているようでは成功できません。
本部の持つノウハウは非常に有益ですし、それを活用すると他社より優位に立てるのは確かです。しかし、本部に「おんぶにだっこ」で自主性がない経営をしてしまえば、状況が変化した時に生き残ることができません。
たとえば、本部からロイヤリティの値上げを通告されたり、本部自体が事業を廃止、または縮小したりしたときに、どうしてよいかわからなくなってしまいます。成功するためには、主体的に行動し、自社でも企業努力を続けることが重要なのです。
そして、いざ経営が悪化した時にうろたえることなく、自社独自の対策を出して困難を乗り切らなければなりません。繰り返しになりますが、本部に完全に依存する経営をしないことが、フランチャイズで成功する鍵だといえます。
住宅フランチャイズのメリット
住宅フランチャイズに加盟すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。6つのメリットについて解説します。
知名度をアップできる
1つ目のメリットは知名度をアップできることです。大手フランチャイズはテレビCMの放映や、これまでの施工実績などにより高い知名度を持っています。
そのため、顧客から見ても「知っている」ため安心感があります。宣伝広告の内容によっては、サービス内容まで顧客が知っている認知度が高い企業である可能性もあります。
いずれにせよ、こうした知名度・認知度を築き上げるには時間が必要です。加入することで、高い知名度を利用できるのは営業するうえで有利だといえます。
フランチャイズ本部が持つノウハウを利用できる
2つ目のメリットは本部が持つノウハウを利用できることです。たとえば、新しい住宅を開発する際、一般的な工務店やハウスメーカーが独自に開発するのはとても大変ですし、時間がかかります。
しかし、本部は商品開発など中枢機能に集中できるため、新商品や新技術の開発スピードを早めることができます。
また、本部がすでに持っている耐震性や省エネ基準をクリアしたハイスペックな商品を、すぐに販売することもできます。こうした本部が持っているノウハウを利用できるため、事業を優位に進められるのです。
スケールメリットを生かせる
3つ目のメリットはスケールメリットを生かせることです。スケールメリットをいかせるのも、加盟するメリットです。住宅建設に必要な資材を本部が大量に購入し、加盟店に手配できるため仕入れコストを大幅に削減することができます。
昨今のように資材が高騰していると、資材購入時にコスト削減できるメリットはかなり大きいものがあります。コストカットできれば、その分、住宅価格を引き下げることができ、顧客に還元できます。
マーケティングの支援が得られる
4つ目のメリットはマーケティングの支援が得られることです。マーケティングとは、商品やサービスを販売するための活動のことです。商品開発の際に顧客のニーズを調べたり、宣伝・広告により商品やサービスの魅力をアピールしたりすることもマーケティングに含まれます。
住宅であれば、家を建てたい人がどのようなニーズを持っているか調べ、それにあわせた住宅を提供することが大切です。夫婦二人だけの住宅であればコンパクトな家がよいでしょうし、子どもたちが成長過程であれば部屋数が多い家や庭がある家の方が望ましいかもしれません。
そういったことを考えながら、住宅のマーケティングを行うのはとても大変です。住宅フランチャイズに加盟していれば、本部の支援を得られます。これまでの蓄積に基づいた提案をしてくれるので、やみくもに営業活動をするよりも効果的に住宅販売ができます。
また、近年の顧客動向の変化に対応した、webを活用したマーケティングについての支援も得られます。インターネットの普及に伴い、ユーザーは自分で情報を集め、能動的に動くようになってきました。
これまでのようなテレビCM中心の集客から、webサイトやオウンドメディア(自社で保有するメディア)、InstagramやTwitterなどのSNS、YouTubeに代表される動画などを活用した広告にシフトしつつあります。
そうしたノウハウを持たない中小のハウスメーカーや工務店にとって、本部がwebマーケティングを担当してくれるのは非常に心強いことです。
マーケティングの面で支援を得られることで、加盟店は住宅の建設や顧客のフォローに時間を使うことができます。経営に専念するため、それ以外の要素を本部にゆだねられるのは大きなメリットといえるでしょう。
販促ツールを利用できる
5つ目は本部が提供する販促ツールを利用できることです。住宅販売の販促手段は以下のとおりです。
・パンフレットやチラシ
・webサイト
・イベント
・展示場
これらのうち、パンフレットやチラシ、webサイトについては過去に大量のデータを蓄積しているフランチャイズ本部に分があります。過去の蓄積を活用し、本部の広報担当者や専属のweb担当者が高品質の販促ツールを作成することで、加盟店の事業展開をサポートしてくれます。
これらを有効に使うことで、加盟店が企画するイベントや住宅展示場への集客を図り、ユーザーを見込み客へ、見込み客を顧客へと育てることが可能となります。
個々の職人のスキルに依存せずに済む
6つ目のメリットは個々の職人のスキルに依存せずに済むことです。業務の進め方を特定の人物しか把握しておらず、その人がいなくなると業務を遂行するときに支障が出るような状況を属人化といいます。
住宅建設のように職人のスキルが重要な仕事において、属人化する業務がある程度発生するのはやむを得ないことでした。しかし、住宅フランチャイズに加盟すると話が変わってきます。
本部には商品に関するマニュアルや詳細なルールがあり、一定のスキルを持っている人であれば、誰が手掛けても同じ仕上がりになるよう設計されています。また、人材育成の面でも本部のサポートを受けられます。
研修制度を設けているフランチャイズも多いため、自社で職人を育成する手間が省けます。これにより、新入社員の定着率アップが期待できます。本部の技術を使うことで、住宅の品質安定と人材育成の両方の課題を解決することができます。
住宅フランチャイズのデメリット
ここまで、住宅フランチャイズのメリットについてまとめてきました。
知名度を利用できることやコストカットができること、マーケティングや販促ツール、人材育成といった面で本部の支援が得られることなど、中小のハウスメーカーや工務店にはないメリットが多数あります。
その一方で、注意しなければならない点もあります。ここからは、デメリットを3点解説します。
ロイヤリティを支払わなければならない
1つ目のデメリットはロイヤリティ(加盟料)を支払わなければならないことです。定期的に本部に支払わなければならない費用であり、毎月支払うランニングコストだといえます。ロイヤリティの種類はフランチャイズによって異なります。
定額方式は、売り上げの大小にかかわらず、毎月定額のロイヤリティを本部に支払う方式です。好業績のときは手元に残るお金が多くなり、加盟店に有利ですが、業績不振のときでも定額を支払わなければならず、経営の足かせとなることもあります。
売上歩合方式は、売上に対する決められた割合でロイヤリティを算出する方法です。多くのフランチャイズで採用されています。
そして、もうひとつが粗利分配方式です。売上高から原価などを差し引いた利益(総利益)から、決められた割合のロイヤリティを支払います。割合は売上に応じて変動します。ロイヤリティの相場は10万円以上とされていますが、これも、フランチャイズごとに異なります。
ロイヤリティは毎月支払うものであるため、加盟店からすると低いに越したことはないと考えるかもしれません。しかし、ロイヤリティがあまりに低いと、それに比例して本部からの支援が弱くなるかもしれません。
加盟する前に、施工実績やサポート内容などを吟味し、払うに値するロイヤリティであるか、しっかりと考えて契約したほうがよいでしょう。
本部の指示に従わなければならない
2つ目のデメリットは本部の指示に従わなければならないことです。フランチャイズに加盟している以上、使用する部材や建物の設計方法、工期などは本部の指示に従わなければなりません。
アレンジを認めていないフランチャイズで、勝手に施工を変更するとルール違反となりトラブルの元となります。使用する材料についても、自社で勝手に変更することはできません。本部が提供しているノウハウやツールを使っている以上、その指示に従う必要があるのです。
個性が制限されてしまう
3つ目のデメリットは個性が制限されることです。未加盟の店舗の場合、顧客のニーズを最大限取り入れた住宅を建設することができます。
しかし、加盟している場合は本部が許している範囲での変更しかできません。コストを抑えられる反面、自社のオリジナリティの発揮が難しくなるのです。
ただ、この点についてはフランチャイズを比較検討することで回避できます。コストを重視し、バリュエーションがないハウスメーカーもあれば、コストはある程度かかっても、個性的なモデルを多数提供できるハウスメーカーもあります。
契約するときに、自社の考え方と照らし合わせ、もっともマッチする会社と契約することで、自社の特性に合わせた住宅が提供できます。
加盟する前に検討するべきこと
ここまで、フランチャイズに加盟することのメリットやデメリットを解説してきました。両者を比較して「加盟したほうがよい」と判断しても、加盟の前に確認するべきことがあります。それは、本部に当たる会社の経営状態です。
いかにノウハウを提供してくれたとしても、本部が経営難に陥り、倒産するような事態になれば、加盟店ははしごを外された状態となります。中には、加盟から数カ月で本部が倒産し、経営に支障をきたしたという事例もあります。
場合によっては、本部といっしょに倒産に追い込まれるかもしれません。そうならないためには、本部の経営状態や経営方針を見極め、堅実な経営ができている住宅フランチャイズに加盟したほうがよいでしょう。
まとめ
今回は住宅フランチャイズについてまとめました。フランチャイズはロイヤリティを支払うことで、持っているノウハウを加盟店に提供してくれます。加盟店は自社で開発するべきことの多くを本部にゆだねることで、合理的な経営ができるのです。
いわば、役割分担することで住宅建設や顧客サポートに専念できるのです。ただし、本部に支払うロイヤリティは決して安いものではありません。販売不振のときには経営の負担となってしまいます。
本部が提供してくれるノウハウやサービスを比較検討し、自社の方針ともっともマッチするものを選択することで、両者の長所を生かした経営ができるでしょう。